日本天文学会の春季年会に参加していろんな研究者と話をしていると、ちょっと気になった事があります。というか議論の過程で出てきた話なんですけどね。
研究を進めていくと、理論にしても観測にしても
「何らかの前提条件」
を置くのが普通なのですが、そのことが一般の人には伝わっていない、ということです。どういうことかというと、専門的な内容をそのまま説明すると、あまりにも難しいし説明内容も煩雑になります。研究者の間で
「とりあえずこう考えておこうね」
という共通認識がある部分については、一般人には伝えないことが多いのです。
例えば、銀河団の大きさを知りたい、リスト化したいと考えたとします。ここには数多くの「前提条件」があります。
我々が観測できるのはあくまでも銀河団の見かけの大きさ(視直径:角度)のみですので、リアルな大きさ(光年 or Mpc)に変換しようと思えば、その銀河団までの距離が必要になります。ここで語られない前提条件を挙げると、次のようなモノがあります。
①距離そのものは近傍の銀河団だと結構わかってきているけど、遠方の銀河団は適当な宇宙モデルを仮定すれば赤方偏移から求められる(ことになっている)
②どこまでを「視直径」とするかが難しい。基本的には中心は密度が高く、外に行くに従ってある程度近い銀河団であれば、中心からの密度分布を等温モデルなどの関数で設定し、値が十分小さくなったと考えられるところまでを銀河団のサイズとする
③遠方の銀河団だと視直径が測りにくい場合があるので、宇宙背景放射が銀河団中の高温ガスによって逆コンプトン散乱を受けることによる「スニヤエフ・ゼルドビッチ効果」から奥行きの距離はわかる。だから銀河団が球状だと考えれば、
奥行き=直径
だと考えることができる
こういうのが複数混じってカタログなどは作られていきます。論文ではどういう手法でやったのかが書かれていますが、一般向けにはその辺は省略しちゃうので……
こういう「前提条件」を元にして研究をやっているよ、だからわからないことも多いんだよという話が重要だと思っているわけです。
もちろんその他の研究と矛盾しない、大きく外れないような「前提条件」は必要なのですが。